国の私学助成の増額と拡充に関する意見書
平成28年委員会提出意見書案第3号(議決日:平成28年9月23日)
私立学校は、国公立学校とともに国民の教育を受ける権利を保障する公教育の場として重要な役割を担っており、国においても、昭和50年に学費の公私間格差是正を目的とした私立学校振興助成法を制定し、文部省による国庫助成たる各種助成措置を講じてきたところである。
しかし、地方自治体では、財政難を理由に私学助成を抑制、削減する動きが後を絶たない。愛知県においても、平成11年度に「財政危機」を理由として経常費助成が総額の15%カットされ、授業料助成も対象家庭が縮小された。その後、県の私学関係予算は、国の私学助成増額を土台に、経常費単価では徐々に増額に転じ、一昨年度、16年ぶりに平成10年度水準を超え、昨年度は国からの財源措置(国基準単価)を6年ぶりに回復した。しかし、少子化による生徒減とも重なって、多くの学園の経営は深刻な事態が続いている。
また、父母負担の公私格差はいまだ大きく、多くの生徒が無償の公立に対して、私学の初年度納付金は約64万円を超え、授業料助成制度があるものの、私学を自発的に選択できる層は、ごく一部に限られている。
とりわけ、平成22年度の「高校無償化」の際に、公立高校は無償化される一方、私立高校生には就学支援金が支給されたが、愛知県では財政難もあって、県独自の授業料助成が大幅に減額された。特に乙ランク(年収350万円以上840万円以下)の層では、公立が11万8,800円軽減される一方で、私学助成は2万4,000円の加算にとどまり、父母負担の公私格差は大きく広がった。その結果、「教育の機会均等」が著しく損なわれ、私学を選びたくても選ぶことのできない生徒がますますふえた。そのため私立高校は生徒の募集難に苦しみ、私学教育本来のよさを損ないかねない状況に置かれてきた。
このような状況下で、この3年間、愛知県においては、国の無償化政策見直しに伴う就学支援金の加算分約15億円(約5億円×3年)を活用して、従来の授業料助成制度を復元し、授業料本体については、乙1.ランク(年収610万円以下)までの層はその3分の2を、乙2.ランク(年収840万円以下)までの層は半分が助成されることとなった。また、入学金補助は、年収350万円以下の甲ランクは20万円に増額・実質無償化され、今年度は年収350万円から840万円の乙ランクが9年ぶりに増額された。
それにもかかわらず、「父母負担の公私格差の是正」は、いまだ抜本的な解決には至っておらず、私学を自由に選択できないなど、「公私両輪体制」にとっていびつな状況が今なお続いている。甲ランクでは、授業料本体と入学金については、無償化されたが、施設設備費などを含めた「月納金」では、いまだ約5万円の公私格差が残っている。しかも、年収350万円以下の低所得者層は、公立の倍以上の比率で、学費の高い私学に来ているという現状がある。一方、入学金補助は、甲ランクは20万円となり、実質無償化されたが、年収350万円以上の世帯では父母負担の大きな格差が残っている。
一方、全国的には、平成26年度の文部科学省調査でも16道県が制度改善を行わなかったと発表されたように、せっかくの国の加算措置が多くの自治体で独自制度の改善に結びついていない現状が続いている。
私学は、「公教育」の重要な役割を担っている。本来、学校は、公立・私立を問わず、誰もが教育の中身によって自由に選択することが望ましく、父母負担と教育条件の公私格差を是正することは、単に私学の問題だけでなく、父母・市民にとって切実な要求であり、とりわけ、準義務化された高校教育においては急務となっている。
貴職におかれては、父母負担の軽減と教育改革を願う広範な父母国民の要求に応え、学校と教育を最優先する施策を推進することこそが望まれている。
よって、当議会は政府に対し、国の責務と私学の重要性に鑑み、父母負担の公私格差を是正するための就学支援金を、一層拡充するとともに、併せて、私立学校振興助成法に基づく国庫補助制度を堅持し、私立高校以下の国庫補助金と、それに伴う地方交付税交付金を充実し、私立高等学校以下の経常費補助の一層の拡充を図られるよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成28年9月23日
江南市議会
提出先
内閣総理大臣
財務大臣
文部科学大臣
総務大臣
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